世界への愛を歌う。TRIGGER「My Precious World」
2020年11月18日 : IDOLiSH7
たとえどんな世界であってもTRIGGERは真っ直ぐ、明日への希望を歌う。
IDOLiSH7、TRIGGER、Re:vale、ŹOOĻによるドラマ「ダンスマカブル」主題歌を歌うのはTIRGGER。久しぶりの彼らの新曲はこれまでのTRIGGERの魅力と共に、新たな一面も見ることが出来る名曲だった。
この楽曲が、これまでのTRIGGERのディスコグラフィーの中でも際立って大きなスケール感を持っているのはドラマ主題歌という事もあるだろうが、間違いなく彼らの成長も関係しているだろう。自分たちの事を歌うようだった「SECRET NIGHT」「DIAMOND FUSION」の頃よりも視線はより未来に向いている。
まるで荒廃した世界の真ん中で鳴るかのようなピアノのアルペジオからゆっくりと曲は始まる。ピアノの下では16分でルートを刻むベースが緊張感を持たせながらも曲の始まりを盛り上げる。
曲全体の基盤となるのはEDM。10年代に世界中に広まったパーティーを盛り上げるような派手なEDMとは真逆、シリアスにしっかりと作品世界を表現するダンスビート。深いリバーブやフィルター、細かなエフェクトの使い方で丁寧に構築されたサウンドスケープは、彼らの代表曲の一つ「In the meantime」を思い出させ、それだけで感情は揺さぶられる。ここぞという時にこだわりの詰まった曲をリリースするのが彼ららしい。
丁寧に始まる歌は曲の展開と共に次第に熱を帯びていく。高らかに鳴り響くコーラスは壮大な世界観をより強く表現している。感情を込めて歌われる「何が正義なんて答えよりも 君のためにそう負けないさ」という力強い言葉。サビへ向かってビルドアップ的に盛り上がるクラップとキックのバランスが気持ち良い。
サビに入るとこれまでの幽玄な印象を与えるサウンドから一転して、潰れるくらいに歪ませたディストーションギターがノイジーに響く破壊的なサウンドへと変貌する。まるでありったけの気持ちをギターの音に乗せたようなハードな音。音楽は歌だけじゃなく、音にも感情を込められる事を証明している。だから音楽は、芸術は尊い。
サウンドの随所に工夫が込められたトラックにも関わらず、スノッブな印象にならないのはドメスティックで耳馴染みが良くキャッチーなメロディのおかげだろう。どれだけ刺激的な存在であったとしてもTRIGGERはアイドルだ。様々なクリエイターが彼らの為に最高な楽曲を、衣装を、ステージを準備する。そして彼らは最前線でアイドルとして歌って踊る。
例えどんなに生きづらい時代であっても、世界が荒れ果てていても、真っ直ぐに明日への希望を歌えるのがTRIGGERというアイドルなんだろう。これまで、彼らの歌、言葉、そして生き様に刺激を受け何度も救われてきた。
この「My Precious World」という楽曲にも彼らの姿勢がしっかりと込められている。あくまでドラマ主題歌という位置付けではあるが、その歌詞から読み取れるのはドラマの世界観だけでなく、今の世の中に生きる僕たちに向けられたものでもある。例え自らがどんな状況であってもTRIGGERの三人はこの世界を愛している。そして道を切り開いていく。そんな彼らから僕たちが受け取れるものは数え切れないほどあるだろう。
この曲はTRIGGERから世界へ、そして明日へ向けられた希望そのものだ。どんな立場にいる人に対しても、彼らは等しく慈しみの心を持って対峙する。それは愛そのものではないだろうか。人によって世界は構成される。人に、世界に対するラブレターのような曲。だからこそ「My Precious World」は心に突き刺さる。
僕は彼らのように真っ直ぐ世界を愛せているのだろうか。例え今それが出来ないとしても、これからはもっと世界を愛したいと思った。