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劇場版アイドリッシュセブン「BEYOND THE PERiOD Day1」を観て

2023年5月。IDOLiSH7、TRIGGER、ŹOOĻ 、Re:valeという4組のトップアイドルグループが集結した初めての合同ライブ「BEYOND THE PERiOD」が開催された。

これまでに全く体験したことの無いスケールのライブが果たしてどんなものになるのか全く予想のつかない中、楽しみと緊張感を胸にライブビューイング会場へと足を運んだ。

事前に注意事項等のアナウンスがあり、スクリーンには会場の様子が映し出される。色とりどりのペンライトが輝く中、今回のライブのテーマソングとも言える「PiECES OF THE WORLD」をモチーフとした楽曲が流れ、ライブは幕を開けた。

トップバッターは昨年末のBLACK or WHITE LIVESHOWDOWNで優勝を果たしたIDOLiSH7。ファンの誰もが特別な思いを抱くであろう代表曲「MONSTER GENERATiON」は1曲目に相応しい。メンバー全員が傘を手に持ったポップな演出が新鮮だ。閉じられた傘は雨上がりの象徴。これらから始まる虹のようなライブを楽しんでというアイドルからのメッセージにも感じる。

MCを挟んで2曲目はファンにとってもメンバーにとっても大切な曲「RESTART POiNTER」センター陸の歌い出しを優しく見守る和泉一織。一時的にセンターを引き受けていた彼だけが持つ、この曲に対する想いはきっとずっと消えないんだろう。

IDOLiSH7の次に登場したのはŹOOĻ 。まず披露されたのは、デンマークのレッフェスで現地の音楽ファンからも評価を得た「ZONE OF OVERLAP」トラップ以降のビートメイキングに、ハードなギターを載せたサウンドが会場を盛り上げる。溶鉱炉をイメージした映像の演出に否が応でも心が熱くなる。

2曲目は、2年前のブラホワで歌われた「Bang!Bang!Bang!」強烈にアッパーなダンスビートは彼らの勢いをこれでもかと加速させていく。デビュー当時はアンチヒーロー的な印象の強かった彼らだが、上記したレッフェス以降に手に入れたエモーションで、胸に響くパフォーマンスを見せつけてくれる。

3グループ目はTRIGGER。一時期、謂れのないゴシップによってメジャーシーンを追われた彼らがMOPの舞台で復帰への道を切り開いた楽曲「DAYBREAK INTERLUDE」イントロと共に階段を降りてくる姿にはトップアイドルとしての風格がある。最早お馴染みになったそれぞれが披露するハイレベルなソロダンス。MVで見ていた以上に力強い八乙女楽のダンスを見ると、男性ファンの多さにも納得する。

次の楽曲は「Last Dimension」ミュージカル用の楽曲として発表されたエレクトロニックな楽曲だが、今回はなんと、しっとりとしたシンフォニックなアレンジで歌われた。一時期、ゼロの偽物が世間を騒がしていた際には、過去のアイドルではなく現代の自分たちを見ろという姿勢を貫いたTRIGGER。確かな実力と圧倒的な表現力、そしてTRIGGERとしてのプライドがあるからこそ彼らの自信は揺るがない。

最後に登場するのはRe:vale。4グループの中でも最年長であり、絶対王者と呼ばれる彼らは最後の登場に相応しい。映画「Mission」の主題歌でもあり、ファンの中でも根強い人気を誇る「NO DOUBT」で幕を開けるショータイム。しっかりとしたスキルに加えて、積み上げられた経験を駆使した余裕のあるパフォーマンス。BLACK or WHITE LIVESHOWDOWNで王座を奪われたとはいえ彼らは王者だった。

2曲目は、Re:valeのディスコグラフィの中でもトップクラスに華やかな「Re-raise」ビッグバンド的なこの曲は、彼らが一流のエンターテイナーだということを証明している。ゴージャスな演出にも全く嫌味がなく、ものすごく上質なショーを見ているような感覚になる。ラストはRe:valeのライブでは外せない赤色のソファ。この2人は座るだけで本当に絵になる。

映像による今回出演している4グループ16人の紹介から始まる後半戦。観客席から登場する演出で驚かせたのはIDOLiSH7のメンバー達だ。サプライズに会場のテンションも上がる。そんな中で披露されたのは新曲「NiGHTFALL」スケールの大きさと、美しいメロディをもつこの曲は、今の彼らだからこそ歌えるのだろう。デビューからの沢山の経験が彼らをここまで大きくした。それをずっと見守ってきたファンは万感の思いに浸ったのではないだろうか。

続くŹOOĻも「STRONGER & STRONGER」を初披露。ミドルテンポでキャッチーなこんな楽曲を彼らが歌うとはデビュー当時には誰も想像できなかっただろう。沢山の痛みや喜びが、彼らを成長させたのは想像に難しくない。メロディアスでメロウなこの曲は彼らの新境地でもあり、彼ら自身のパーソナルな面が実は色濃く出ているのかもしれない。

Re:valeが聴かせてくれた新曲「Journey」は優しいポップソング。様々なジャンルの楽曲を生み出す千の作品の中でも、彼の作曲能力の高さを最も表しているのがこういった楽曲なんじゃないだろうか。流行のサウンドや、インパクトのある展開に頼らなくても普遍的なポップスを書ける事が、作家として最も優れた能力だと改めて思い知らされる。

最後に登場したTRIGGERは、バキバキなダンスチューン「BEAUTIFUL PRAYER」をパフォーマンス。これまでの彼らのディスコグラフィにはありそうでなかった楽曲だ。クールな印象ではなく、彼らが本来もつ情熱的な面とダンストラックを融合したこの曲で、会場は最高潮に盛り上がる。ダンス・ボーカル共に、彼らのスキルの高さが遺憾無く発揮されたこの曲が、今後の彼らの幅を更に広げるかもしれない。

TRIGGERのパフォーマンスに興奮してカラカラになった喉を潤そうと、水の入ったボトルに伸ばした手が止まった。このイントロは「Incomplete Ruler」TRIGGERが主演を果たしたミュージカル「ゼロ」のクライマックスを飾る名曲。ゲネプロ時に七瀬陸が九条天のデュエットの相手を務めていたとファンの中では有名な話だったが、まさか公式に彼ら2人のパフォーマンスを目にできるとは思いもしなかった。

作詞者の痛みすら感じさせる内省的な歌詞と、切なくも力強く美しいメロディ。近年ポップシーンで発表された楽曲の中でも屈指の名曲が2人によって紡がれる。この二人の声の相性は本当に素晴らしい。ラスト掛け合いのように交互に力強く歌われるパートに思わず涙腺が緩んだ。

切ない表情をしてステージを去る天。一人残された陸に向かって鳴り響くのは「TOMORROW EViDENCE」のイントロ。背景のスクリーンが開き、そこに待っていたのはIDOLiSH7のメンバー達。ミュージカル「ゼロ」で描かれたのはゼロの孤独だったが陸は一人じゃない。仲間がいる。彼が孤独になることは無いはずだ。彼は愛されていて、それを理解している。

多幸感に溢れたステージ。紡がれるメロディと明日を願う歌詞。力強い間奏で他の3グループが登場し出演者全員が揃う。この上なく輝くステージ。16人で歌われる「幸せになろう!みんな!」というメッセージ。感動は最高潮に達していた。

16人によるMCを挟んで、本編最後に披露されたのは今回のライブのために書かれた「Pieces of The World」地球への、世界への愛を祈るような楽曲。トップアイドル16人による一糸乱れぬ圧巻のパフォーマンス。アイドルというカルチャーはただの偶像なんかではない。アイドルにしか出来ない、アイドルだからこそ伝えられる想いやメッセージがあるんじゃないだろうか。それをこの16人と「Pieces of The World」というアンセムが証明してくれた気がした。この曲は僕たちの時代の「We are the world」にもなり得る。

アンコールで歌われたのは、16人での「Welcome, Future World!!!」旅として表現されていたこのライブが終着点である「世界への祈り」に辿り着いた後に、まだ旅は終わらないと披露されるのは未来への願い。たとえどんな困難な時代でも、彼らは未来への希望を歌い続けてくれる。だからこそ「Welcome, Future World!!!」という楽曲は飛び切り明るいことに意味がある。

今回のライブ「BEYOND THE PERiOD」は各グループのパフォーマンスも、16人集結してのパフォーマンスも一瞬も目を離せない瞬間の連続だった。TRIGGERのMCで、奇跡の連続で存在しているのが今の地球であり今この瞬間だと話していたが、まさにこのライブ自体が奇跡の連続そのものだった。奇跡は運頼みなんかじゃなくて、自分たちの行動で起こすものだとアイドル達は証明してくれた。

彼らが教えてくれた大切な事を僕は忘れない。彼らの願いに答えられるのは、きっと僕たち自身の想いと行動だけなのではないだろうか。次は、僕達が返す番だ。

・・・

劇場版アイドリッシュセブンをライブ形式でやると年明けに知って呆気に取られた。というよりも、どんなものになるのか全く想像ができなかった。待望だった劇場版がライブ?映画館でライブ?頭上にクエスチョンマークが10羽は飛んだ。凄い!という思い以上に混乱の方が若干上回っていた。少なくともその位、僕にとっては未知のものだった。

結果的に今作「BEYOND THE PiRIOD」は全く新しい体験を僕に与えてくれた。体験として新しすぎて、一瞬これは何を観ているんだろう?と最初に思ったりもした。この体験に近いものを強いて挙げるとすれば、昨年から大ヒットして未だにロングランしている「THE FIRST SLAM DUNK」だと思う。

3Dと手書きを融合した革新的なアニメーション表現。原作直撃世代としてはたまらない山王戦+宮城リョータを軸に置くことで深みの増したストーリーラインなど、ヒットの理由は沢山あると思う。そして、僕が最も新しいと感じたのが、アニメーション映画でありながら実際のスポーツの試合を見ているような体験だった。それに近い感覚を今回の劇場版アイドリッシュセブンでは感じた。

レインボーアリーナで行われているライブをライブビューイングで観ているという状態。会場にはお客さんが実際に沢山いてアイドルを応援している。実際のステージがあって、アイドル達はそこでパフォーマンスを行なっている。それを撮影したものを観ている。幾重にも重なったレイヤーの上にある体験。それはとても新鮮だった。

元々アニメに明るいわけではないので一概にはいえないが、「THE FIRST SLAM DUNK」と並んで今作は、アニメーション作品として物凄く新しいことをやっているんじゃないだろうか。ハイレベルな技術と、アイドリッシュセブンチームが持っているアイドルの創出という想いへの情熱が生み出した体験型エンターテインメント。それらが高いレベルで組み合わさって初めて生み出された今作こそが、本当に奇跡みたいなものなんだと改めて思った。

最終的に僕が受け取ったものは、もっと人を幸せにする仕事をしたいという気持ちだった。こんな気持ちを与えてくれる作品はそんなに沢山あるわけではない。とても貴重だと思う。制作チームから受け取った情熱を大切にしたい。

ありがとうアイドリッシュセブン。

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