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アイドリッシュセブンの楽曲が好きな理由を考えてみた

朝、顔を洗いながら僕は何故アイドリッシュセブンの楽曲が好きなのだろうと考えた。

そもそも僕は普段、海外の音楽ばかり聴いている。別に日本の楽曲が悪いと思っている訳ではなく単純に好みの問題だ。日本語の曲を聴く際もどちらかというと、海外シーンからの影響があるものを聴いている事が多い。そんな中で、なぜかアイドリッシュセブンの楽曲はずっと好きだ。

アイドリッシュセブンに登場する各グループの音楽の傾向としては、海外志向というよりも明らかにドメスティックな音楽だと思う。そういった面だけで言えば、個人的に好んで聴く音楽ではなかったはずだ。にも関わらず、僕は彼らの音楽を聴いている。時には涙しながら。

うむむ、何故だろう。本来なら「好きだからさっ!」と理由はそれだけでよいはずなのに無駄に頭を捻って出た答えは、彼らの楽曲が王道だからだった。

世の中には沢山のアイドルグループが存在する。例えば00年代以降のアイドルブームにしても如何に斬新なリファレンスを持ってきてアイドルに歌わせるかに力点が置かれていたように感じる。それは実際に面白いし悪い訳ではないが、僕はあまりそこには乗れなかった。

そもそも太陽星座・月星座共に牡羊座だからなのか、本気で王道を進もうとするものに惹きつけられるところが僕にはあるらしい。だからか、コミックソング的なものにどこか距離を置きたくなってしまう。

過去にはSMAPが「Hey Hey おおきに毎度あり」と歌い、僕は子供心に変な曲だなと思ったものだが、今聴けば完全にニュージャックスウィングじゃないか。めちゃくちゃ格好良い。だから今は好き。勝手な人間だ。

アイドリッシュセブンに登場するアイドルグループはグループ毎に楽曲のカラーが違うが、基本的にコミカルな要素は限りなく少ない。

強いて言えばシャッフルユニットで歌われた「男子タルモノ!〜MATSURI〜」くらいだろうか。いわゆる電波ソングを思わせる超高速BPMのハイテンションな楽曲。むしろ、その辺りのシーンを元ネタにしているんだろう。アイドリッシュセブン全体からしても、かなり異色な楽曲だと思う。

それよりも久々にこの曲のタイトルを目にしたら、現代的にはかなりギリギリなジェンダー観がストレートに出ていて、リリース当時はそんなこと思いもしなかったのに世界はどんどん変わっていくなと思った。良くも悪くも。

とは言っても「男子タルモノ!〜MATSURI〜」はそのタイトル通り、ゼロアリーナのこけら落としというハレの日の為に作られたスペシャルなお祭りソングなので、色々な意味でイレギュラーなのは間違いない。

少なくともそれぞれのグループがリリースする曲、そしてソロ曲においてコミカルな路線へ向かった楽曲はない。それどころか、どの楽曲もリリースされた時代の音楽シーンと程よい距離感を保ちながら、王道の楽曲として作られたものばかりだった。

王道を作るのは一番難しい。その時代の流行りを取り入れすぎても、数年後には風化してしまい最も古いものとなってしまう。コミカルでキャッチーな楽曲には、瞬発力はあるのかもしれないが、その瞬間にだけ消費され、寂しさだけを残して消え去ってしまう宿命も持ち合わせている。

そもそも王道とはなんだろう。時代の移り変わりに左右されない耐久力を持ち、不特定多数の人へとリーチするパワーを持つもの。それはきっと計算や戦略でどうこうできるものでは無い。作り手の作品に対する圧倒的な情熱と愛情。少なくともそれは王道を生み出すことに最低限必要な要素なんだと思う。

例えば、マーケティングの力で時代に上手く乗り、勢いで爆発的に流行した曲があったとしても、「ナナツイロREALiZE」のどうしようもなく感情を動かされる魅力には敵わない。その二つには圧倒的に超えられない壁のようなものがあるんじゃないだろうか。と僕は思っている。

安易な方向へ流されずに、ずっと愛情を持ってファンへ名曲を、美しい物語を、驚きを届けたい。そんな気持ちが滲み出ているから、アイドリッシュセブンのことをずっと追ってしまう。

アイドリッシュセブンが向かっている王道は、いかに資本を増やすのかが重要な現代の価値観とは別の価値観を生み出すヒントになり得る気すらしている。その道はきっと厳しい。岡本太郎が言うところの「危険な道」を選んでいるのではないだろうか。無意識なのか、結果的に新しい時代を切り開く為に。

IDOLiSH7が「MONSTER GENERATiON」を歌ったその日から、彼らはこの時代を駆け抜け続けている。この8年間で音楽シーンはもちろん、世界すらも大きく変わった。そんな中でずっとアイドリッシュセブンはブレずに王道を進み続ける。ずっと誠実に。ずっと真っ直ぐ。僕はそれに憧れずにいられない。だから彼らの歌う王道の音楽は心を揺さぶる。

と、色々考えていたら良くわからない方向に行った。

ノイズは消せ。YAOTOME IN MY HEADが言う。ノイズを消し、自分の心の奥に問いかける。なぜ自分はアイドリッシュセブンの楽曲が好きなのか。余計なものはいらない。魂に問いかける。すると答えが浮かび上がる。そうか、わかった。

「好きだからさっ!」

僕はアイドリッシュセブンの楽曲が好きだから聴いている。答えはそれだけだった。それだけだったが、それが何よりも大切なんだろう。音楽だから。

彼らがDon’t stop the music!と歌い続ける限り、僕はきっと彼らの音楽を聴き続ける。

これまでのように、これからも。

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