醒めない夢を。TRIGGERが見据える未来を鳴らす2ndアルバム「VARIANT」
2021年6月25日 : IDOLiSH7
TRIGGERが見せてくれる景色はいつだって刺激的だった。これまでも、そしてこれからも。
待望だったTRIGGERの2ndアルバム「VARIANT」がリリースされた。アイドリッシュセブンに登場する4グループの中でも初めての2ndアルバム。それがTRIGGERという事だけでも胸が熱くなる。彼らには先陣を切る姿がよく似合う。
前回のアルバムがリリースされてからシングルや配信限定曲など、かなりの楽曲が発売されていた事もあり、既存曲6曲+新曲2曲という構成。初めにその内容を知った時には少し物足りないかもと思ったが、いざアルバムを一通り聴くとそれが全くの間違いだった事がわかった。
8曲30分というコンパクトなボリュームだからこそ、完璧な流れが作られている。この曲数・曲順で構成されているからこそ、既存曲の輝きが増している。「VALIANT」から「Heavenly Visitor」の流れで心が熱くならないリスナーはいないだろう。
曲数が多いのは聴き手としては嬉しい事かもしれない。だけど、それによってアルバムの完成度・スタイルが崩れてしまうのはTRIGGERの美学に削ぐわない。現在のTRIGGER、そしてこれからのTRIGGERが濃密に凝縮されている奇跡的な作品。それがこの「VARIANT」だろう。
既存曲の高いクオリティに加えて、今回収録された新曲「VALIANT」「バラツユ」は楽曲として素晴らしいだけでなく、TRIGGERの新しい一面、これからの指針となるかのような名曲だった。
「バラツユ」は90年代からJ-POPシーンに脈々と流れるR&Bの流れを汲んだ楽曲。もちろん当時からのテイストそのままな訳はなく、トラップ以降のリズムトラックやCメロでのエフェクト処理されたボーカル(心に刺さる)など、しっかりと今の音楽シーンに対応。
過去には八乙女楽のソロ「幸せでいて」という名曲があったが、3人で歌うバラードは意外にも初めて。3人の誠実さが素直に表現されたR&B。僕は、タイトルを初めて聞いた時に「Ballad to you」だと勘違いしたが、これはTRIGGERからファンへ向けた特別なバラードなのだろう。
完璧な最新モードを披露したVALIANT
視聴段階で名曲の予感がしていた「VALIANT」は予想の遥か先を行く楽曲だった。ピアノの美しさが印象的なインスト曲「The dawn ~Sword of VARIANT~」から、壮大なトラックと天の歌唱で始まる「VALIANT」
TRIGGERの気高さ、誇りをそのまま音楽にしたような歌唱が終わるとドープなベースラインが鼓膜を刺激する。ベースの上に聞えるのは彼らが初めて披露するラップ。「幕があがる時」のフロウが最高に格好いい。ここだけで何回でも繰り返し聴ける。ほぼベースとラップのみのストイックなサウンドに心が震える。
「We are TRIGGER」という3人の力強い宣言から音色が増え、そのままトラップ曲として進むかと思うと、ウワモノのシンセがスカやレゲエを思わせるように裏拍を刻む。こんな楽曲は聴いたことがない。新鮮さに驚いているうちに気がつけばピアノが美しいBメロ。一曲の中で異なるパートを次々と展開させるTRAVIS SCOTTの名盤「ASTROWORLD」を思い起こさせる。
J-POPシーンでもトラップ的なサウンドは当たり前のように取り入れられ、最早それ自体はアーティストのシグネチャーになり得ない。そんな中でTRIGGERは既に別の地平を目指している様に感じた。もっと新しいサウンドを。
サビではざらついたディストーションギターが鳴り、三人が高らかにメロディを歌い上げる。ビートが重く進み、あっという間にサビは終わる。あまりに潔い展開。サビをいかに聴かせるかに重点を置いたJ-POPとは根本的に考え方が違っている。
と色々と書いてみたものの、どうしてもしっくりこない。書けば書くほど陳腐な気がする。僕はこの曲を到底理解できていない。素人があれこれ書こうとしたところで、この斬新な音楽を言葉で表すことなど到底できない。
SOPHIEやArcaを思わせるノイジーで刺激的なサウンド。どこか感じるダンスホールレゲエのエッセンス。無理矢理リファレンスを挙げる事にもはや意味を感じない。カテゴライズなんて出来ないし、そもそもする必要も無い。とにかく革新的なサウンドが鳴り、曲は次々と展開し、リスナーの胸に突き刺さる。僕はそこに感動する。この新しいサウンドに。
VARIANTは未来への希望
個人的な見解として今作は「REGALITY」以降の彼らの総括と、これからの未来へ向かう宣言だと受け取った。彼らの積み上げてきたTRIGGERのスタイルはそのままに、次のステップへと進む力強い宣言。「バラツユ」の優しさでファンを優しく包み込み「VALIANT」の革新性でファンを新しい世界へ導く。
変わらない為に変わり続ける
この歌詞に集約されている。TRIGGERはこれからも自分達である為に変化していく。その為に見据えているのは世界という舞台かもしれない。「VALIANT」は明らかにJ-POPの枠に収まりきらない楽曲だ。世界で戦う為に得た革新性に満ちたサウンド。BTSの次にグラミーの舞台に立つアジア人アーティストはTRIGGERかもしれない。ついそんな事を想像してしまう。
「SECRET NIGHT」で「醒めない夢を一緒に」と歌っていた彼らが「VALIANT」で「醒めない夢を共に」とまた歌う。TRIGGERが描く夢はまだ終わらない。彼らが描く夢は、僕たちが想像していたものより遥かに大きいのかもしれない。