Second BEATは鳴り止まない。アニメ アイドリッシュセブンOP・EDを聴いて
2020年4月20日 : IDOLiSH7
アイドルは未来への希望を見せてくれる。
待ちに待った「アイドリッシュセブンSecond BEAT!」が2020年4月から放送開始となった。アニメ第1期がストーリー解釈・クオリティの高さ・ファンへのサプライズなど、どこを取っても名作と呼ぶに相応しい作品だった事もあり、Second BEAT!への期待は最高潮に高まっていた。そんな中、いざ放送が始まり久しぶりに体験したアニメ作品としてのアイドリッシュセブンは相変わらず素晴らしく、放送時間があっという間に過ぎてしまう時間伸縮型アニメとしての姿も健在だった。
すでにアプリ内で十二分に堪能しているストーリーだが、アニメーションとして見ると、あのシーンはこんな感じだったのかと思わされるところばかり。キャラクター全員が活き活きと動き(中には予想以上に活き活きと動いて驚いた人物も)彼らと再会できた事に本当に喜びを感じている。
そして、本編と共に僕が心から楽しみにしていたのがオープニングとエンディングの曲だ。第1期では作品の新たな旅立ちに相応しく、IDOLiSH7のポジティブなエネルギーに満ち溢れた「WiSH VOYAGE」TRIGGERの新たな一面を聴かせてくれて驚いた「Heavenly Visitor」と、各曲共に期待を上回る素晴らしさだった。
これまでアプリ内や、バースデイ企画でも抜群にハイクオリティな曲を聴かせてくれてきたアイドリッシュセブン。アニメ新シリーズのオープニング、エンディングとなれば期待値はどれだけ上げても上げ過ぎにはならないだろう。そんな心構えで初回の放送日を迎えた2020年4月5日、僕はオープニングで号泣して、エンディングでも号泣した。
未来への希望を歌う「DiSCOVER THE FUTURE」
オープニング曲は当然IDOLiSH7。彼等らしく元気でエネルギッシュなこの曲はオープニングに相応しく明るくポップ、そしてこれまでのIDOLiSH7史上、最も“アイドルらしい”楽曲だと感じた。
アイドルらしいとは何だろうか。これはあくまで主観的な話になってしまうのだが、聴く人に元気を与えるアップテンポなビートと、一緒に楽しむことができるコールアンドレスポンス。これらはアイドルソングの重要な要素ではないだろうか。
「DiSCOVER THE FUTURE」のアップテンポなビートは思わず体を揺らしたくなる。これまでにも「THANK YOU FOR YOUR EVERYTHING!」や「PARTY TIME TOGETHER」などテンポの早い楽曲はあったが、今回の「DiSCOVER THE FUTURE」も含めて共通して感じるのは、楽しさと切なさが共存している点だと僕は思う。楽しいからこその切なさ。それは掛け替えのない時間が終わって欲しくないという気持ちだろう。そんな繊細な感情をIDOLiSH7の楽曲は見事に刺激する。
そしてもう一つの要素であるコールアンドレスポンス。IDOLiSH7はそれこそ始まりの曲「MONSTER GENERATiON」から曲中でファンと共に歌い合えるパートがあった。ライブでアイドル達と歌声を重ねられるのはファンにとっての喜びの一つだろう。
「DiSCOVER THE FUTURE」でのサビ中のコールアンドレスポンスはこれまで以上にシンプルかつ曲の勢いに乗っているので、例えば小さな子供でも一緒に歌って楽しみやすい。それは陸をセンターにしたIDOLiSH7の形にぴったりなイメージだと僕は思う。
それと同時に、この曲が子供っぽくならないのは、全編に渡って流れる上品なストリングスのフレーズや、スケールの大きさを感じさせるサビのメロディがあるからだろう。それらの要素が「DiSCOVER THE FUTURE」という冒険を感じさせるタイトルに見事にマッチしている。彼らの冒険はいつも未来へ向かうためのものだ。
音楽への愛が詰まった名曲「ミライノーツを奏でて」
そしてエンディングテーマを歌うのは予想通りRe:valeだった。第1期のようにエンディングが入るのは3話目くらいだと勝手に思い込んでいたので初回放送日の最後、不意に流れてきたイントロの素晴らしさもあって大号泣。泣き過ぎて頭が痛くなる。あぁこの感じアニナナを観てるんだなと変な感慨深さを感じた。
今回、Re:valeが聴かせてくれたのはポストロック的なバンドサウンド。これまでにも様々な曲を歌ってきたRe:valeだが、今回の「ミライノーツを奏でて」はまた新たな一面を聴かせてくれた。美しいピアノのフレーズから始まるこの曲は、誰もが心を動かされる素晴らしいメロディと様々な音楽的要素を同居させた、さすがRe:valeと思わずにはいられない名曲。
いくつも複雑に絡み合う楽器の音、エレキギター、アコースティックギター、ピアノ、ストリングス、ベース、ドラム、一音一音どの音も程よく生っぽさがあり、耳触りが良くて心地良い鳴り方をしている。それぞれの楽器が奏でる短いフレーズを左右に幅広く配置したミキシングは曲の世界を大きく広げる。初めてヘッドフォンで聴いた時にはそのこだわりに本当に感動した。
ミキシングの妙を最も感じさせるのが、ミニマルミュージック的な要素を入れ込んだAメロではないだろうか。スティーブ・ライヒを思わせるミニマルなピアノとストリングスが独特な緊張と世界観を構築。しかもそれを小難しく感じさせず、単純に美しさとして楽曲に取り入れているところに抜群のセンスを感じる。
そして、そんな音へのこだわりを丸々飲み込んでしまう程に素晴らしいのがメロディと歌詞だ。Aメロからサビまでとにかくキャッチーで心の琴線に触れる歌。絶妙なバランスでハーフになるリズムの展開と相まって何度聞いても涙をこらえる事ができない。特にBメロで千の歌う「現実の乱反射に瞳閉じたくても」という一節。こんなに切実で美しい言葉があるだろうか。
今回のアニメシリーズでは、本編ラストに重なるように「ミライノーツを奏でて」のイントロが流れる。そのタイミングと物語の展開が絶妙過ぎて毎回、観終わるたびに号泣してしばらく放心状態になる週末を過ごしている。
未来を探しに行こう
世界中の誰もが今、新しいウィルスによって混乱の時期を過ごしている。そんな中で、「アイドリッシュセブンSecond BEAT!」は放送の延期を決定した。それは本当に難しい判断だったと思うが、いつだってファンはもちろん、作品の質や作り手を最優先にしてきたこの作品だからこその英断だと思う。僕はより一層、アイドリッシュセブンの事が好きになった。
「天気の子」や「ファイトクラブ」でのラストシーンがそうだったように、今は世界の形が変わってしまったのかもしれない。誰にもこれから先がどうなるのか分からない中、僕たちが進むのは未来だけだ。アイドリッシュセブンはいつだって未来へ向かう大切さを語り続けていてくれた。ストーリー第3部のキャッチコピー「見据えて未来だけ」がそうだったように。
DiSCOVER THE FUTURE
今日がどんな状態だって、僕たちは未来を見つけに行ける。たくさんの困難を乗り越えてきたアイドルの姿から僕はそれを教わってきた。彼らは今日も力いっぱい笑顔で歌い、踊る。そんな彼らの姿を知っていながら下なんて向いている暇はない。
僕たちにも今だからこそ探せるミライがあるのではないだろうか。そこで鳴るオトはきっと力強い。Second BEATは鳴り止まない。第一話の始まりの鼓動と同じように、それは今も僕たちの中でしっかりと鳴り響いている。