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まだ終わらない物語。受け継がれる想いとForever Note

Forever Note

「Forever Note」この曲は、音楽家として生きていく道を選んだ逢坂壮五の決意そのものだろう。

彼が初めて作曲した「Monologue Note」は、これまで自分自身のやりたい事を選ぶことが出来なかった彼が、初めて自らの意志で生み出した音楽だった。荒削りで、初期衝動のままに作られたその楽曲は、いびつでありながらもどこか美しく、作曲者本人の音楽に対する情熱を投影しているようだった。

その壮五自身の情熱と焦燥感が詰まった「Monologue Note」をベースにして、新たにMEZZO”の曲として生み出されたのが「Forever Note」だ。

人に届ける為のリアレンジ

「Monologue Note」は本当に衝撃的だった。これまで少しづつ語られていた壮五の音楽的な趣味をダイレクトに反映し、抑えられない衝動をスピード感と、激しい音で表現していた。だが、その一方で荒削りな部分が目立ってもいた。

しかし「Forever Note」では音楽に対する衝動や情熱はそのままに、技術とセンスによって、しっかりと人に届ける為の音楽として作り上げられている。

思いきり歪ませていたギターは、よりコードの響きを聴かせる為にクランチ気味の音色に。勢いを持って暴れていたドラムは、楽曲に躍動感を与える跳ねるリズムへと変わった。そして少し過剰なくらいにドラマチックだったピアノは、メロディを活かす美しい旋律になってひっそりと曲を支えている。


イントロなどに入るThe Edgeを彷彿とさせる何重にも重なるディレイギターは大きく空間を広げ、まるでU2のようなスケール感さえも手に入れたかのようだ。(どうでもいいが、いつまでたってもディレイの代名詞がThe Edgeというのは如何なものかと自分で書いておきながら思う)

激しさやインパクトのある音を抑えて隙間を活かすアレンジにした事で、楽曲本来の良さがダイレクトに伝わるようになった。まるで、00年代中盤のUKロックシーンで活躍したバンドRazorlightが、自分たちの拙さを覆うように歪ませたギターを鳴らしていた1sアルバムから、よりシンプルなサウンドでメロディの美しさを最大限まで引き出した結果、名盤である2ndアルバムを作り上げた成長に似ている。

「Forever Note」は音色をシンプルにしたから、退屈になったかと言うと全くそんなことはない。むしろ、無駄な音を削ぎ落としたギター・ベース・ドラム・ピアノのオーセンティックなバンドセットによるストイックなアレンジ。これによって、曲が持っていた美しいメロディラインが浮き彫りになった。沢山の人にこの歌を届けたいという壮五の想いが伝わってくる。

MEZZO”であることの大切さ

当たり前だが、この曲にとって重要な事柄はこれが逢坂壮五名義でのソロ楽曲ではなくMEZZO”の楽曲ということだろう。「Monologue Note」はあくまで逢坂壮五個人の表現だった。だが「Forever Note」は環と共に歌う2人の楽曲だ。そして事実、環の歌声が乗ることで、ちゃんとMEZZO”の歌へと昇華している。

これまでMEZZO”の楽曲や、ライブでも聴かせてきたように、2人の声の相性は本当に素晴らしい。「Forever Note」でも壮五の甘い声と、環のエモーショナルな声、それぞれの声がお互いの声を引き立たせて素晴らしいコントラスト生み出し、曲の幅を大きく広げている。

この曲での環の歌声は、これまでの、どの楽曲よりも感情的で、聴く者の心に真っ直ぐ突き刺さってくるように聴こえる。環は本当に嬉しかったのだろう。彼は、壮五がやりたいようにやって欲しいとずっと願っていた。だからこそ壮五が作った曲をのびのびと歌っている。これまでも環が精一杯歌っていたのは確かだが、この曲を歌う時には特別な力の入れ方を感じる。

そして、そんな環の歌声があるからこそ壮五の歌も力強く聴こえる。

「Monologue Note」の時はとにかく焦燥感を感じさせる声だったのが、2人で歌う「Forever Note」では全く別人のようにたくましくなっている。隣に環がいるからこそ、安心して自分の曲を自信を持って歌うことができるのだろう。これは間違いなくMEZZO”の2人の楽曲だ。

桜春樹から受け継いだもの

では、何が壮五をここまで大きく成長させたのだろうか。

それはきっとノースメイアで桜春樹の死と向き合った事だろう。ゼロの楽曲を作り、IDOLiSH7もその楽曲群を歌ってきた稀代の音楽化の最後に立ち会うという経験は、同じく音楽家だった叔父を亡くしている壮五には大きかったはずだ。

どれだけ沢山の美しい音楽を生み出しても、誰にでも死は平等に訪れる。誰もが限られた時間の中で生きている。その時間の中で桜春樹や音楽家達は、人に届ける為に音楽を生み出し続けている。その事を知った時に、壮五の中で大きな覚悟が生まれたのではないだろうか。

自分の中から溢れてくるとめどない感情を1人で抱き続けるのを止め、想いを音楽に乗せて届けていく道を壮五は選んだ。孤独を音に乗せる必要なんてもう彼には必要はない。人に自分の気持ちを伝えるのが苦手だった壮五が、これからは過去の自分と同じような思いをしている人達に歌い続けていく。

それはこれまで音楽家達によって受け継がれてきた想いでもあるのだろう。壮五はしっかりと春樹からそれを受け継いだ。だからこそ、彼の葬儀で覚悟を決め、自分の足で一歩を踏み出した。自分自身が踏み出せば世界は簡単に変わる。そして自分が動けば、自分を信頼してくれている人がきっと助けてくれる。

新たな道を選んだMEZZO”にはどんな未来が待っているのだろう。これから未知の世界に立ち向かっていく2人の想いが込められた歌声に、胸がかきむしられるような気持ちになる。

それでも大丈夫だ。2人で歌い続けていればもう迷うことは無い。彼らの音楽はずっと鳴り響いていくに違いない。桜春樹の音楽がそうだったように。

物語はまだ終わらない。

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