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名曲揃い!12 SONGS GIFT アイドリッシュセブン編

12 Songs GIft I7

アイドリッシュセブンはファンが何を求めているのかを知っているとつくづく思う。2017年の誕生日企画はそれぞれの誕生日にソロ写真集が出るという、1人1人のメンバーを深く掘り下げる事が出来るものだった。そして今年の誕生日企画は12 SONGS GIFTと題され、毎月それぞれのメンバーのソロ曲が聴けるというもの。なんとも贅沢なギフトだ。

この12 SONGS GIFTはそれぞれのソロ曲が連なっての全12曲という企画なので、アルバム的な流れは考慮されてはいないのだと思う。むしろ1曲1曲、そして1人1人の持つ魅力を楽しめるようになっている。それは曲単体で聴くことを前提としたSpotifyなどサブスクリプションサービスが当たり前になってきた今の時代には非常にマッチしているように感じられる。

今回はアイドリッシュセブン編と題し、あくまで個人的な感想として7曲のレビューを書いてみた。

和泉一織 / ONE dream

一年間にわたり展開される12 SONGS GIFTのオープニングを飾るにふさわしい堂々とした曲。美しいピアノと壮大なアレンジが印象的なこのバラードは王道のJ-POPを思い起こさせてくれる。亀田誠治が弾いているのかと勘違いしてしまうくらいにメロディアスなベースがスローなテンポの中にも躍動感を与える。

しっかりと地に足のついた安定感のあるボーカリゼーションはこれまでの和泉一織に感じてきたものなのだが、今回のソロ曲は驚くほどに力強く歌われている。普段は冷静な一織がこんなにもエモーショナルな歌声を聴かせるのかと感動をした。きっとそこには、これから更なる高みを目指していくアイドリッシュセブンというグループに対する強い想いや決意が込められているのだろう。

ここまで心情を吐露する事が少なかった一織が歌うからこその感動を得られ、涙なしには聴く事ができない。八乙女楽の名曲「幸せでいて」にも並ぶ素晴らしいこのバラードによって12 SONGS GIFTのクオリティは保証された。

二階堂大和 / Love two you

グループ内では最年長という事もあり常に「お兄さん」というスタンスでいる大和だが考えてみればまだ22歳。「Love two you」と題されたこのソロ曲はリーダーとしての大和ではなく、22歳の青年である彼の等身大の姿を垣間見る事ができる。

爽やかで優しい音色を中心にしたトラックは普段は恥ずかしがって隠しがちな一面、仲間思いで優しい彼の姿を音で表現しているようだ。そして、そんな繊細な音色を乗せるリズムはしっかりと力強い。そこにはいつだってグループの為なら自ら泥を被る覚悟を持っている大和の芯の強さを感じる。この曲はまるで強さの上に優しさを持つ二階堂大和そのものだ。

最初は予想以上に爽やかな曲調に少し驚かされたが、過去の自分自身へと歌っているようにも聴こえる歌詞だからこそ大和は素直にこの曲を歌えたのではないだろうか。

和泉三月 / 三日月のヴェール


数字にこだわりを持つアイドリッシュセブンの中でも、ここまで音楽的に数字と関連づけられた楽曲も珍しい。タイトルにふさわしく三拍子でゆったりと展開するワルツは三月の優しい歌声で穏やな時間を過ごさせてくれる。

徹底して三拍子で進む楽曲の中でも特にサビの譜割が見事。例えば、三日月を見に「行こう」の部分など、それまでのメロディがたゆたうように歌われる中で不意にピタリと三拍子に合った時に楽曲の構造の美しさにハッとさせられる。

またCメロの終盤、ベースが倍でリズムを刻む事で躍動感やスピード感、そしてラストサビへの盛り上がりがしっかりと生み出され曲の展開が作られている。男気とエネルギッシュさが魅力でストレートな三月がこのテクニカルな曲を歌った事が嬉しい。何よりも彼らしく丁寧に歌われる事で「三日月のヴェール」は初めて完成する。

四葉 環 / Four Leaf Ring

ステージ上でのダンスパフォーマンスが魅力的な環のソロ曲は王道のハウスチューン。メロディアスなシンセサウンドと、跳ねたリズムで躍動感のあるこの楽曲はダイナミックに踊りながら歌う環の姿を容易に想像させる。

これまでのどの楽曲でも個性的かつ抜群の歌声を聴かせてくれる環だが、このソロ曲ではこれまで以上に感情が込められている。元々テクニックではなく本能的な直感と生まれ持ったセンスで歌・ダンス共にハイレベルなパフォーマンスを見せてくれていた環は、このソロ曲で楽曲に思い切り感情を乗せた。只でさえクオリティの高かった表現の魅力がさらに増している。

この曲の理に向けられたであろうメッセージ、共に戦う仲間たちへの想いを込めて環は精一杯に歌い踊っているのだと思うだけで胸が熱くなる。そして、このストレートな楽曲のようにそのまま真っ直ぐにステップを踏んでいればいいんだよと応援したくなる。

逢坂壮五 / Maybe

12 SONGS GIFTの中でも一番の衝撃作。安定したパフォーマンスを魅せるアイドリッシュセブンでの壮五でも無く、切なくバラードを歌いこなすMEZZO”の壮五でも無い、音楽好きだった彼が好きなものを好きだと表現したソロ曲。

90年代ビジュアル系から、所謂ロキノン系、更にはBiSHなど現代のアイドルにまで脈々と受け継げられているJロックサウンドの魅力が詰まっている。ヘビーなギターリフと耽美なピアノの交差は心を震わせ、間奏のしっかりとキックを踏んだ重たいビート感、ディレイを使ったCメロのアルペジオで音楽ファンのツボをしっかりと押さえる。ラストの裏打ちハイハットで00年代以降のトレンドにもしっかりと目配せをする展開は完璧。

これまで優しい歌声を聴かせてくれていた壮五の力強いボーカルを聴くと、本当に音楽好きな青年の一番素直な面が出ている様に感じられ嬉しくなる。是非、ステージ上ではモニタースピーカーに足を乗せて歌って欲しい。

六弥ナギ / June is Natural


ナギのソロ曲は爽やかなアコースティックギターのアルペジオと、ポコポコしたシンセが印象的なトロピカルハウスを基盤にした美しい曲だった。現時点のソロ曲の中で最も海外を意識したサウンドはグローバルな感覚を身につけているナギだからと納得。

テンポ感は早すぎず遅すぎず自然体でいられる心地よさ。音数が少なく洗練されたサウンドプロダクションは軽やかさを、上物のストリングスはナギの上品さを見事に表現している。中でも圧巻なのは途中に入ってくる海のサウンド。穏やかな凪の海は彼の心を表現している様に感じられ曲全体のトーンも合間って、なんて洒落た演出なんだと感心した。

これまでアイドリッシュセブンの楽曲の中では独特な歌い方もあり気が付けなかったが、心のこもった歌をじっくりと聴かせてもらった事でナギの声の優しさを改めて知った。全体的に漂う切なさに心を締め付けられるのは、これから先のナギの物語を想像してしまうせいだろうか。

七瀬 陸 / SEPTET for…

12 SONGS GIFTプロジェクトでアイドリッシュセブンの最後を飾るのはグループのセンターを務める陸だ。この曲では改めて陸の歌声のパワーに心を奪われる。

正直に言うと僕はアイドリッシュセブンを始めた頃、環の方がボーカリストとしては上では無いかと思った事がある。しかしストーリーが進み、様々な曲を聴いている内にグループの真ん中に立つのは陸しか考えられなくなった。陸の声はセンターに相応しい。歌唱法などのテクニック面では無く、声として圧倒的にセンターなのだ。

このソロ曲「SEPTET for…」では天性のボーカリストである七瀬陸の歌声を存分に浴びる事ができる。眩しすぎるくらいに純粋で真っ直ぐな歌声で始まるこの曲はポジティブなエネルギーに満ちている。楽曲が進むにつれ声の力強さは増していき終盤、守られるだけでなく守りたいという強い決意を持った陸の歌声は圧倒的な力強さを放つ。これまで沢山の人達に助けられてきたという自覚のある陸だからこその想い。陸は未来を照らしていける。

まとめ

これら7曲以降、既にリリースされている九条天、八乙女楽のソロ曲もそれぞれ素晴らしいクオリティで12 SONGS GIFTへの信頼感が揺らぐことは無い。もっと言えば、アイドリッシュセブンの楽曲への強いこだわりが改めて証明されたとも言える。

毎月リリースする新曲、しかもそれぞれのソロ曲であればもっとコメディチックな曲があってもおかしくは無いだろう。でもアイドリッシュセブンプロジェクトはそれをしない。ゲームという枠組みに捉われず、純粋に楽曲として素晴らしいものを我々ファンに毎回届けてくれる。

その妥協無き姿勢があるからこそ僕はアイドリッシュセブンを信頼できるし、追いかけたくなる。今更ながら、ただの音楽ファンだった自分がここまでアイドリッシュセブンの魅力に取り憑かれたのはストーリーはもちろん楽曲の良さがあるからこそだと再認識させられた。これだからアイドリッシュセブンはやめられない。

最後に、あくまでも想像だが陸のソロ曲「SEPTET for…」は一織のソロ曲「ONE dream」へと繋がり「SEPTET for ONE dream(1つの夢に向かう7重奏)」になるのではないだろうか。陸の「歌おう SEPTET…」という呼びかけで7人は歌声を重ね、それはまるで7色の光を放っているよう。彼らがそこから目指す場所は最高のもっと先まで。まだ誰も見たことの無い景色を目指して7人は進んで行く。1人では叶えられない夢もこの7人でなら叶えられるという同じ想いを持って進んで行く。

アイドリッシュセブンは僕たちもまだ見たことの無い景色をこれからも見せてくれるだろう。まだ未来は照らされ始めたばかりだ。

【追記:2018年12月28日】TRIGGER / Re:valeのソロ曲について書いた後編もアップしました。

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