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最高のラストシーンへ向かって。IDOLiSH7史上屈指の名曲「Mr.AFFECTiON」

Mr.AFFECTiON

アイドリッシュセブンは一体どこまで僕たちの期待を超えていくのだろう。

2020年になり、アイドリッシュセブンに登場するアイドルグループによる4週連続シングルリリースが始まった。その最初を飾るのはIDOLiSH7の「Mr.AFFECTiON」これまでにも数多くの名曲を生み出してきたコンテンツだが、またもやネクストレベルの新曲を聴かせてくれた。

壮大なサプライズが仕掛けられた楽曲

この曲を初めて聴いたのは4部の予告PVのBGMとしてだった。

4部のPVが公開された時に、僕は哀愁を帯びたコード進行や曲の展開から、この曲こそが新しい「未完成な僕ら」なのだと予測をした。脳内で、何度歌メロを再生してもぴったりと合う。これはえらいことに気がついてしまった。間違いなく「未完成な僕ら」だ!

しかし、4部ストーリー配信前にその事をツイートしてしまっては興ざめもいいところ。何よりも我々を楽しませてくれようとしている運営チームへの裏切りともなってしまう。これは!やばい!という気持ちをぐっと抑えることにした。

PVが配信され、全国のマネージャー達がまるで暴動のように六弥ナギのパスポートを燃やそうとする中、僕は一人この曲のアレンジに興奮し、あまりの完成度の高さに怯えていた。

が、それはまんまと罠にはまっていただけだった。

明らかに「未完成な僕ら」とミスリードさせる事を前提にしたコード進行で作られている。こんなややこしいサプライズはファンを信頼していないと出来ないだろう。4部のストーリーを読み進める間、僕は「未完成な僕ら」新バージョンを早く聴きたいと待ちわびていた。おかげで「Mr.AFFECTiON」を始めて聴いた時にはひっくり返るくらいに驚いた。

最高なダンスナンバー「Mr.AFFECTiON」

「未完成な僕ら」と考えなかったにしても、バキバキのサウンドとハードなビートを聴かせてくれるこの楽曲が、IDOLiSH7の新曲だと分かって驚いた人が大多数ではないだろうか。そのくらい、この曲はこれまでの彼らのディスコグラフィと比べると異質だ。

思わず身体を揺らしてしまうハイスピードなBPMと、スリリングなシンセやグリッチ系のサウンドが次から次に鳴り続けるアッパーなダンスチューン。16小節目からスネアが入るAメロや、2番サビ後にリズムがハーフになる展開など、クラブミュージックマナーに則った構成。最高なところを挙げだすとキリがない。

中でもBメロの譜割りは見事で、ミニマルでシンプルなメロディはとにかく耳に残るし、実際に自分で歌うとリズムの乗り方がめちゃくちゃ気持ち良い。理屈じゃなくイントロを数秒聴いただけで盛り上がるこの曲は、アイドリッシュセブン史上トップクラスに格好良い楽曲なのは間違いないだろう。

しかし、その一方で「Mr.AFFECTiON」にはどうしようもない切なさを感じる。

IDOLiSH7というグループがどんどん大きくなる事で、お互いに一緒にいられる時間が少なくなってきた現状、ずっとこれまで通りではいられないのかもしれない。と、うっすらと感じてきているメンバーが、その現実に必死に抗っている姿が、どうしても浮かんできて泣きそうになる。目まぐるしく鳴らされる様々なサウンドは、ある種、混乱状態の中にいる彼らの今を表しているのかもしれない。

そんな中でも、2番サビでのMEZZO”の力強い歌声は本当に頼もしい。環は相変わらず感情的でストレートな歌声を、そして壮五は「Forever Note」「カレイドスコープ」を経たからこそ表現できる力強いボーカルを聴かせてくれる。

そんなところにも象徴されるように「MONSTER GENERATiON」を歌っていた頃のIDOLiSH7には歌えなかった曲。この曲は成長してきた今のIDOLiSH7だからこそ歌える楽曲なんだろう。

甘酸っぱいラブソング「ハツコイリズム」

そして、そんな「Mr.AFFECTiON」と対照的なのが、カップリングに収録された「ハツコイリズム」DHCディープクレンジングオイルのタイアップソングとしても起用されたこの曲は、初恋のピュアさを見事に表現した名曲だ。

最初にストーリー上で聴いた時には良い曲だな、くらいの認識だった。これは、僕がアイドリッシュセブンにJ-POP以上のものを勝手に求めていたからだろう。ウェルメイドなサウンドと、上質なメロディ。良い楽曲なんだけど自分の中でスペシャルにはならないと思っていた。

だが、僕は「ハツコイリズム」という物語に触れてしまった。

Webで公開されたオリジナル短編ムービー・ショートバージョンを観た時に楽曲の印象はガラリと変わった。実際の俳優が演じる世界観、どこか切なく美しい映像は楽曲に完璧にマッチしていた。僅か15秒の映像を繰り返し観ているうちに僕はどうしようもなく切ない気持ちになっていた。

ディープクレンジングオイル(妻が使った)とセットになっていた小説は、アイドリッシュセブンの世界で描かれる男女の瑞々しい恋物語。スピンオフとしても捉えられるバランスが素晴らしく、男性目線で描かれるストーリーに引き込まれた。小説を読み終わった時には「君に届け」を10巻まで一気読みした後のような心持ちになっていた。

読了後、すぐに短編ムービーを観た。IDOLiSH7が歌う楽曲をバックに小説のストーリーがコンパクトになぞられる映像は見事に完成されていて、観終わった時に僕は思った。初恋がしたい。しかし、人生に初恋は1回しかないらしい。つまり、僕はもう初恋はできないのだ。それでも、この楽曲を聴けば、あの感情を思い出すことはできる。あれ、僕なにか気持ち悪いこと言ってないですか。

気持ち悪さは置いておいて、何はともあれ楽曲を聴くことで人の記憶に眠っていた感情を呼び起こさせる。音楽が人に与える効果としてこんなに素晴らしいことはないんじゃないだろうか。初恋をコンセプトにしたDHCとのこの企画はタイアップとして完璧だと感じた。現に、僕は極上のJ-POP「ハツコイリズム」が大好きになっている。

最高のラストシーンに向かって

今回、4週連続リリースの第一弾としてリリースされたこのシングルは、IDOLiSH7史上最高のダンスナンバーと、最高のラブソングが収められた素晴らしい作品だった。

「Mr.AFFECTiON」には「ナナツイロREALiZE」との繋がりを強く感じる。「Mr.AFFECTiON」の歌詞に「Under the sky」と入っていたり、それぞれのMVにオーロラが象徴的に描かれている点など。そして、今回のMVでは北欧で撮影されたあのMV以上に陸の孤独がはっきりと描かれている。

落ちサビでメンバーそれぞれがソロで歌うパートは、一人一人が陸に対して歌っているのではないだろうか。だからこそ、クールでシャープな自己プロデュースを行なっていた一織の「ダサくもがいても」という歌詞に目頭が熱くなる。

そして彼らの表情も象徴的だった。「ナナツイロREALiZE」の幸福感とは逆に「Mr.AFFECTiON」ではメンバー全員が終始シリアスな顔をしている。笑いあっているだけではこれ以上進めない場所に彼らはいるのかもしれない。

楽しく笑っていた彼らは、これから偶然だけじゃ生まれ得ない想像のその先に進んでいく。オーロラは夜空にかかる虹のようなものだろう。青空にかかる虹、夜空にかかるオーロラ、たとえメンバーそれぞれがどこにいたって彼らは同じ空の下にいる。

「Mr.AFFECTiON」で宣言されているように、ストーリーではこれから、最高のラストに向かう為に必要なシーンが描かれるだろう。どんな未来が待っているかなんて分からないが、僕たちは彼らを信じて見守ればいい。そこに理由なんていらない。赤い髪の彼の笑顔を信じていれば大丈夫だろう。

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