検索ボタン

アニメ「アイドリッシュセブン」最終話。アニナナとは何だったのか。

thanks_aninana

テレビアニメ「アイドリッシュセブン」は通常放送の終了から約一ヶ月のスパンを開けて放送された16話、17話をもって完結した。制作期間を設けて作られた最終話だけあってクオリティの高さは申し分なく有終の美と言って間違い無いだろう。

最終話の初回放送を観た時には緊張感のあまりオロオロと狼狽しながら見守るだけだったが、2回目の視聴ではストーリーや演出の素晴らしさにほとんどのシーンで号泣。ようやく少し冷静に見れた3回目の視聴でまだメソメソと泣きながらも色々と考える事が出来たので少し書いてみる事にした。そう。ただの長めの感想文だ。

アニメ本編についてはこちらから
[前編]
[後編]

自問自答とファンの応援の力を知り再生を果たした16話

「ご苦労様でした」という地獄の引きから一ヶ月。ようやく観ることが出来たストーリーの続きは映画の様に美しく静かに始まった。それぞれ傷ついた事で自分自身と向き合う事になったIDOLiSH7とTRIGGERのメンバー達。彼らの心情をそのまま描く様な静かで優しい始まり方。まるで本放送の終わり方でズタズタにされた僕らの心と胃をぽっと温めてくれる白湯の様だ。

自分自身と向かい合った上で仲間やライバル達と話して、また前を向ける様になった彼らが小鳥遊社長と共に向かう公園。社長の温かい言葉によって自分たちの原点を思い出すメンバー。ここで遭遇するファンがある意味で苦楽を共にして来た愛と悠香だった事に号泣。初期からアイナナを応援して来た彼女達が報われている姿に自分を重ねてしまったのかもしれない。女子高生に自分を重ねる己のやばさ。

八乙女社長監禁シーンや、TRIGGERのJIMA新人賞獲得シーンなど見どころは沢山あったが、16話で最高なのはやはりライブシーンだろう。

ステージ前、楽屋での一織の話からすでに泣き始めていたのだが、相変わらず素晴らしいクオリティで作られた「MONSTER GENARATiON」のライブシーンに重なる陸のモノローグ。ここで完全に号泣。陸からメンバーそれぞれへの思いが語られる振り返りシーンは鼻をすすりながら観る。

再び戻ったライブシーンで歌われる一人一人のソロパート。おそらくミックスのバランスを変更しているのだろう、歌声が力強くなりライブ感がぐっと増している。こういった細かな所まで気を配ってくれるところは本当にTROYCAの素晴らしさだ。陸がソロで歌うパート「未来はこの手の中に」。2話では天の横顔がアップになっていたこの歌詞部分だが、今ではまっすぐ未来を見据えた陸を正面から捉えたカットになっている。これだけでIDOLiSH7の成長が伝わる。

JIMA新人賞を獲得したシーンで16話は終わった。ここまででもう「最高だった」「いやー名作だったね」と終わっても全くおかしくないのだが、ここから本当のフィナーレであるブラホワが17話で描かれる。もう体力は残りわずかなのに、、だ。

友情!努力!勝利!アニナナ17話!

いよいよ残り30分弱でアニナナは終わる。

放送前の予告カットでダグラス・ルートバンクのシーンが入ることは分かっていたが、まさか最後にここまでコメディ色を強く入れてくるとは思っていなかった。テンポ感の良いやりとりに普通に笑ってしまったが、このシーンのおかげで体力を少し回復出来た気がする。ありがとうダグラス。

ところでダグラスってどの位のミュージシャンなんだろうと何度か考えた事がある。故マイケル・ジャクソン?故プリンス?年齢は関係なしに日本での知名度だけで言うとジャスティン・ビーバーくらいなんだろうか。ダグラスはインタビューではキチッとした服装なので、いつものアレは私服だったらしい。怪しいヘッドバンドとオレンジのティアドロップ型サングラス。そのあたりの不思議センスも含めて天才性を感じるところに上で挙げたミュージシャンと近いものを感じる。Tシャツのどんぶりってホワッドゥユゥミーン?

ドレスアップしていつもよりも渋みが増したミスター下岡のブラホワ開幕宣言により、いよいよアニナナのクライマックスが近づく。

TRIGGERのターンはYoutubeで公開されたスピンオフを思い出させるハイタッチから始まる。MVそのままの振り付けで「LEOPARD EYES」を踊るTRIGGERの三人。ダンスのクオリティ、カメラワーク、リップシンクの精度など本当に素晴らしいライブ映像だ。「LEOPARD EYES」のダンスはMVで何度も繰り返し観ているのでお馴染みの振り付けをライブ版で楽しめるのが新鮮で嬉しかった。

そしてIDOLiSH7のターン。ステージ袖で待つ彼らの様子は、第一話冒頭で見た後ろ姿を正面から捉えた姿だ。あの時の陸はこんなにも力強い表情をしていたのか。と感慨深い。

そして第1部の最後を飾る曲「MEMORiES MELODiES」には心底感動した。これは個人的な好みになるのだが、実はIDOLiSH7の曲の中で「MEMORiES MELODiES」はどちらかと言うと苦手な曲だった。ゲーム中でこの曲の前に入った「THE FUNKY UNIVERSE」が好きだった事もあり、ストーリー進行時にはメモメロを少し弱いかもと感じてしまったのだ。

しかし今回のアニナナによってその思いは粉々に消し飛んだ。

ブラホワ・ライブ映像で観るメモメロの最高さといったらなかった。最初のギターリフでのメンバーそれぞれのキメが格好いい。イントロでメンバー全員が楽しそうに思い切り飛び跳ねる。幼児〜小学生以外で元気一杯という言葉がこんなに似合うのはメモメロのアイナナしかいないだろう。

歌い始めるとメンバーそれぞれの輝きは更に増す。
三月は人一倍大きな動きで歌う。誰よりも飛び跳ねる姿に「帽子落ちちゃうよ!」とハラハラする。
環のダンスはダイナミックで、こんなに動きながらブレずに歌えるのは彼か三浦大知くらいだろう。
ナギの優雅で気品のある動きには誰もが目を奪われ、美しい顔に思わずため息を漏らしてしまう。
このシルエットの帽子とマントをつけてサマになる壮五はさすがだ。優しい微笑みに堕ちそうになる。
大和のリーダーとしての自覚を伴った余裕のあるダンスと歌声は力強く頼り甲斐がある。
JIMAでは少し震えていた一織はもう自信を取り戻したのだろう。笑顔と伸びやかな動きからはステージに立つ事への喜びを感じる。
陸は真っ直ぐに前を見据えてずっと笑顔でど真ん中に立って歌う。改めて聴くと本当にグループのセンターに相応しい声だ。

この後に入るメンバーそれぞれの思いが語られるモノローグが更に涙を誘う。泣きすぎて既に顔面がびちゃびちゃだ。精一杯のパフォーマンスを披露するアイナナメンバー。それを応援するのは彼らをずっと信じて付いてきたファンだけで無く、街中の人々や好敵手のTRIGGERさえもだ。

間奏を挟んで最後のサビでメンバーは心から楽しそうに自由なフォーメーションでステージいっぱいに動く。そこにはミューフェスでミスに引っ張られガチガチになってしまった彼らはもういない。

パフォーマンスが終わりIDOLiSH7の勝利がアナウンスされる。喜ぶアイナナメンバー。悔しがるTRIGGER。そのTRIGGERにも送られる会場からの声援。二つのグループが向かい合う時に劇伴で流れていた「Story of RAiNBOW」の「Let’s Go!」というボイスが高らかに聞こえる。彼らのストーリーはこれから更に進んでいくのだ。

感動のラストショットは放送開始前に公開されたメインビジュアルと同じ構図。そして2話の最後と同じく「俺たちが『アイドリッシュセブンです』」という力強い宣言。完璧なエンディングという言葉しか出なかった。

テレビアニメ「アイドリッシュセブン」とは何だったのか

波乱万丈の彼らのストーリーを全17話に見事にまとめ上げた構成は本当に素晴らしく、そこには確かな美学がある。1話の時点で最後のシーンが既にあり、ラストシーンでまた始まりを見るシンメトリーになった構成。この構築美はスタンリー・キューブリックを思い出させる。

そしてアニメになる事で最も大きかったのは紡の存在だろう。ゲームでは自分が操作している紡がアニメでは一人のキャラクターとして存在する。しかし紡は決して只のヒロインでない。同じ夢を見て共に戦う戦友だ。最初のバスケのシーンで「頑張ってください」と誰よりも最初にアイナナを応援する紡はブラホワの楽屋でも「頑張ってください」とメンバーを応援する。自らはマネージャーとしてバックアップに徹するから最前線で戦う彼らを応援する。

そんなずっと一緒に戦ってきた彼女だったからこそ、ブラホワでTRIGGERに勝利した時に声を出さず一人でさっと顔を覆うシーンに心から感動した。

そして、この作品では他にもヒロインがいると僕は思っている。それはファンだ。初ライブから追いかけ続けているファンだけでなく、途中から彼らを知り応援し始めてくれたファン。彼女・彼等はアイナナにとってのヒロインだからこそ大きく声をあげて応援する。メモメロのライブ中、ステージ袖で言葉を失う紡に対して、客席から見守る好美は泣きながら「頑張れ、頑張って」と応援する。これも一つのヒロインの姿と言っても良いだろう。

アイナナはゲームのストーリーでもアイドルとファンとの関係性を多く描いてきた。アニメではファン一人一人に名前を与え、キャラクターを与える事でよりはっきりとヒロインとしての役割を与えたのではないだろうか。

17話ではRe:valeの登場を始め、街角でモニターの環を見る理や、九条鷹匡の存在などしっかりと第2部以降への引きも入れこんでくれた。これは続編を期待せずにはいられない。

また個人的な意見になるが漫画などが原作の映像化作品が苦手だった。アニメ化された作品でのキャラクターの声に違和感を感じたり、無駄な引き伸ばしや不要なアニメオリジナルストーリーの挿入にがっかりした事もある。

そんな中でアニメ「アイドリッシュセブン」はゲームからのファンにもサプライズを盛り沢山用意し、アニメのストーリー・演出・クオリティ面でも期待以上の物を与えてくれた非常に稀有な作品だったのではないだろうか。僕はそこまでアニメを観ているバリバリのアニメファンではないが、少なくとも好きな作品のテレビアニメ化でここまでの満足感と製作スタッフへの感謝の気持ちを得た事はない。

アニナナはテレビアニメシリーズとして本当に奇跡のような作品だったのだと強く思う。そして第二部・第三部のアニメ化でこれまで以上の苦しみを与えてくれる事を期待してしまうのであった。

IDOLiSH7のオススメ記事