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ストレンジャー・シングスが最高に面白くて愛しい

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ストレンジャー・シングス!なんて素晴らしい響きだろう。そのタイトルだけで心を震わせてくれる。何度だって口に出してしまう、ストレンジャー・シングス。

Netflixオリジナルドラマ「ストレンジャー・シングス」を観た。シーズン1が公開された頃から気にはなっていたのだが、あいにくNetflixを利用しておらず観ることができなかった。今年の1月にNetflixオリジナルアニメ「DEVILMAN crybaby」を観る為に利用し始めたので(こちらも実に素晴らしい作品!)いよいよと思い観始めたら夢中になってしまい、一気にシーズン2まで観終わってしまった。

<以下の内容にはストーリーに触れている箇所もあります>

スリル!笑い!涙!ストーリーがとにかく面白い!

まずは何と言ってもあっという間に引き込まれてしまうストーリーが最高だった。舞台となるのは80年代アメリカの田舎町ホーキンス。平和でのどかだった町で急に起こる一人の少年の失踪事件。それをきっかけに様々な超常現象が起こっていくという、古き良きハリウッドマナーの作品。当時のスピルバーグ作品を見ている様なワクワク感が作中ずっと続いていた。

事件を追っていく中で、だんだんと謎が解き明かされていくストーリー展開はとてもスリリングで目が離せず止められない。かといってXファイルなどの様にシリアスにならない、ほどよい力の抜け具合があるのはメインキャラクターがクラスでもパッとしないナードな男の子グループだからだろう。所々に入るくだらない(ウィットに飛んだ)会話の数々や彼らの純粋さがとても愛くるしい。

更にこの作品の凄い所は魅力的なサスペンス要素と、気の利いたジョークだけで無くしっかりとストーリーで感動させる所だ。作中では何度も涙してしまった。Peter GabrielによるDavid Bowie「Heroes」のカバーが流れるシーズン1エピソード3のクライマックスを筆頭に数々のシーンで感動したのだが、個人的にはジョナサンとウィルの何気ない兄弟のシーンでいちいち涙してしまった。ジョナサンの優しさにどうしようもなく、ぐっと来てしまうのだ。

もはや箱推し!愛しいキャラクター達!

ストレンジャーシングスは、登場するキャラクター達がサブキャラクターを含めて全員が魅力的だ。中でも個人的な推しはウィルの兄ジョナサンだ。

先ほども少し書いた様に彼はとても優しい。母子家庭の中でいつでも弟ウィルと母ジョイスを気遣っている彼は(食事はジョナサンが担当する事が多いようだ)、学校では偏屈な変わり者と思われている。所謂イケてるグループの同級生がスポーツや恋愛、パーティに夢中になっている間、彼は部屋でThe ClashやJoy Divisionこそが本物の音楽だと言って聴き、モノクロでアーティスト然とした写真を撮って悦に浸り、いつも猫背で歩いている。あれ、、思春期の頃の自分みたいだ。。

そんなジョナサンの大切なカメラを壊すという悪行をやってのけるスティーブも最高に魅力的なキャラクターの一人だ。格好つけてナイフで穴を開けた缶ビールを飲み干したり、夜には主人公マイクの姉ナンシーの部屋に忍び込んで迫ったりシーズン1ではイケイケな姿を披露してくれる彼も、シーズン2では釘バットを片手にキッズ達の面倒を見るベビーシッターに見事クラスチェンジした。

彼とダスティン(主人公グループの中でも特にナード感の強い男の子)とのコンビは最高で、スティーブはダスティンに顎で使われながらもしっかりと彼の事をほっとけずに気にかけている優しさがある。明らかにスタンドバイミーな線路上を歩くシーンや、ラストのスノーボールシーンは素晴らしく、この二人が愛しくてたまらなくなってしまった。ところでスティーブはシーズン1、シーズン2共に馬乗りでボコボコにされたが今後のシーズンでもこの流れは続くのだろうか。だとしたらあまりに可哀想すぎる。スティーブには是非とも幸せになって欲しいと切に願う。

他にもシーズン2で新登場したジョイスの恋人ボブ(子役時代にグーニーズでマイキーを演じた彼に海賊の宝でもあるのかい?ははっ!と言わせるなんて最高のオマージュだ!)、カルフォルニアからの転校生ビリーとマックス、濃すぎるキャラクターの陰謀論者マレーなど、とにかく全員が魅力的でシーズン2を観終わって寂しさを感じてしまった。こんな寂しさは「あまちゃん」以来だ。

80年代の雰囲気がたっぷりと詰まったビジュアル

そもそもこのドラマはロゴデザインから80s要素が詰まっている。スティーブン・キングの小説のタイポグラフィを参考にしている様なのだが、タイトルバックでの黒背景に発光するロゴが少しづつ映し出されている様はメインテーマの雰囲気と相まって最高にドキドキするオープニングだ。レトロなテイストを出すために少し映像にノイズを入れる所など細部まで行き渡ったこだわりが本当にツボを押さえている。

シーズン1ではCGをほとんど使用していないらしく手作りのVFXも魅力的に機能している。スターウォーズで言うエピソード1とエピソード7の違いの様なものだろうか。CGが悪いわけではないがアナログな手法ならではのオーガニックな香りが全編に漂っており、映像の質感もあって時々現代の作品を観ている事を忘れそうになった。特に高校のシーンはフットルースの様なノスタルジアがありクラっとした。

登場人物のファッションや髪型も魅力的で洋服の趣味にも影響を受けそうになっている。中でもシーズン2で登場するカルフォリニアからの転校生ビリーのファッションが強烈で印象的だった。自慢の胸板を見せるために前を大きく開けたシャツ。Gジャンの胸ポケットにタバコ、ヒップラインを強調するタイトなデニムパンツ。妙に長い襟足。最高にセクシーだビリー。

メインテーマを筆頭に音楽が素晴らしい!

ストレンジャー・シングスは音楽がとにかく素晴らしい。Kyle Dixon & Michael Steinによる劇伴は、この80年代のムードをたっぷりと含んだ作品をただの懐古趣味なドラマではなく、モダンな物語として昇華させるのに本当に大きな影響を与えている。全編等して流れるシンセサイザーで作られたミステリアスで、不気味で、少しロマンティックな音楽はメジャー映画とは一線を画するものでどこかインディ精神を感じさせる。

シーズン1では特にそうだったがドラムなどのリズムがほとんど入らないので、音楽が流れていても良い意味で気にならずシーンのムード作りに徹している。リズムに頼らない盛り上げ方や雰囲気作りは本当にセンスが重要だと思うので、ほとほと感心した。

その一方で作中の様々なシーンで流れる80sポップスがドラマを大いに盛り上げてくれている。ゲームセンターでのDEVO、ダンスシーンでのCyndi Lauper、都会のシーンでのBON JOVIなど挙げればキリがないがどこのシーンでも音楽によって魅力がぐっと増している(そして時に笑える)。

これはストレンジャー・シングス大解剖を観て知ったのだが、シーズン2ラストのスノーボールシーンでカメラが逆さまになりアップサイドダウンの風景に変わるとホーキンス中学校をマインドフレイヤーが見ている映像になる。この時に流れているのがPOLICEの「Every Breath You Take」なのだが、歌詞の「I’ll be watching you」が本来と別の意味で恐ろしく演出されている。なんてパーフェクトなんだろう!

個人的な話だが20代前半の頃、物事に迷った時はいつも頭の中でThe Clashの「Should I stay or should I go」をぐるぐるさせていた。シーズン1でデモゴルゴンから隠れているウィルはずっとこの曲を口ずさんでいた。兄ジョナサンから教えてもらったこの曲を歌い自分自信を励ましながら動くべきか隠れているべきか考えていたのだろう。とても心に響いたシーンの一つだ。

まとめ

ここまで書いて来た様にストレンジャー・シングスはストーリー、キャラクター、ビジュアル、音楽、全てがかなりの高水準で作られている。これまで観ていなかった事が我ながら謎だ。これだけのためにNetflixを契約する価値は絶対的にあると個人的には思う。一気にシーズン2まで観終わって軽くホーキンスロスに陥りそうだった僕はiPhone用ゲームのストレンジャー・シングスをプレイしたりして気持ちを保っている(このゲームも昔の“ゼルダ”や“カエルの為に鐘は鳴る”みたいで面白い)。

シーズン3の制作は決まっているらしいので他のNetflixオリジナル作品などを観ながら、また少し成長したホーキンスの人々に会えるのを楽しみに待とうと思う。ストレンジャー・シングス、、なんて愛しい響きなんだろう。

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